タブー排して本音で議論を

毎年暑い季節になると核問題や原子力問題がマスコミを賑わすが、今年もホットな話題には事欠かない。

 まず、核問題の分野では、いうまでもなく最大の関心事は北朝鮮の核兵器開発の行方、そしてそれとの関連で日本の安全保障をどう確保するか、日本も核武装すべきかどうかだ。

とくに最後の問題は、長年タブー視されており、一部のタカ派の政治家や学者の間に限られていたが、最近では新聞、雑誌等の一般的論壇でかなり大ぴらに議論されるようになっている。中には、日本は北朝鮮ごときに舐められないようにこの際非核三原則をきっぱり放棄して、早急に核武装すべきだとする主張も目立っている。

この点に関する私の意見は、拙著「日本の核・アジアの核」(朝日新聞社、1997年)や昨年六月二十一日付けの本欄(「日本は核武装するか?」)等で明らかにした通りで、一言で言えば、核武装は日本の安全保障にとって百害あって一利なしと考えている。

ただし、私は、日本核武装問題が一般国民の前でオープンに議論されることには決して否定的ではなく、むしろこれを歓迎する。毎年八月初めの原爆投下記念日に広島と長崎で発表される平和宣言の中でも、今年は是非、従来のような「反核」(諸大国の核兵器保有に反対)だけでなく、「非核」(日本自身の核武装に反対)の立場をも強く訴えてもらいたいと願っている。

私が危惧するのは、そうした真面目な主張ではなく、一部の政治家や学者によるいかにも尤もらしい「日本核武装論」の齎す国際的悪影響である。それは日本外交の足を引っ張るだけではない。彼らの「日本はプルトニウムを大量に保有しているから短期間で核武装が可能だ」等という不用意な発言により、他ならぬ我が国の核燃料リサイクル政策が一段と厳しい国際的な批判に晒されるからだ。発言する以上、せめて原子炉級プルトニウムと兵器級プルトニウムの相違くらいは十分勉強をしてからにしてもらいたいものだ。

次に原子力問題では、さしあたり東電の原発運転停止による首都圏域の大規模停電が今夏最大の懸念材料だが、幸い福島、新潟両県の現実的な対応により、最悪の事態はなんとか避けられるかもしれない。他方、使用済み燃料の中間貯蔵問題についても、むつ市が前向きに検討を進めている模様で、今後の進展が期待される。

ただし、仮にむつ市の件が首尾よく行っても、それで当面の使用済み燃料問題が全部片付くわけではなく、やはり六ヶ所再処理工場の運転問題は残る。また既存のプルトニウムを消費するためには、プルサーマル計画の実施は不可欠であり、さらにその先の高速増殖炉計画のためには「もんじゅ」の早期再開が必要だ。ただでさえ難しいこれらの問題を、電力自由化の潮流の中で正しく解決して行くにはあらゆる知恵を絞らなければならない。

そのために今最も必要なのは、関係業界や学界だけでなく、全国民的な規模でのオープンで率直な議論である。しかし、現状ではまだ諸々のしがらみやタブーがあって、自由闊達な議論が出来ていない。

そこで、手前味噌ながら、私も二年程前から「エネルギー環境Eメール会議」(EEE会議)と称する私的な意見・情報交換の場を設けて、右のような諸問題に関する幅広い議論を連日のように行っている。現在全国各地の約五百名の方々とのEメールによるネットワークが出来ているが、さらに活動の輪を拡大するため、新たに会員制度を導入して、EEE会議の組織化を進めている。関心のある方は是非一度ホームページ(http://www.eeecom.jp)にアクセスしていただければ幸いです。