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フランス等はなぜ原子力利用を推進するのか?

  • 執筆:金子熊夫
  • 掲載日:2011年9月26日
  • 掲載紙: 北海道大学での講演

これは2011年9月26日に、札幌の北海道大学において行った講演「これからの原子力政策を考える(第4回)」のために用意したメモで、この講演(質疑応答なども含む)は動画になっており、次のサイトで見ることができます。

http://www.ustream.tv/recorded/17519019

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2011年9月26日 
北海道大学・リレー講演会「これからのエネルギー政策を考える」
講演者:金子 熊夫(エネルギー戦略研究会会長)
テーマ:「フランス等はなぜ原子力利用を推進するのか?
      ~エネルギー政策の戦略性と民族性~
1.

1.フランスの核・原子力政策の歴史的背景
●第2次世界大戦前~直後
  アンリ・ベクレル、ピエール&マリー・キューリー夫妻などの活躍
  F.ジョリオ・キューリーの役割と軍事利用の否定
  フランス原子力庁(CEA)の設立(1945年)、ドゴール将軍の臨時政府下
  マンハッタン計画後の政治的変化、「赤狩り」、ユダヤ系学者の排除
  米英加ソ等との確執(B.ゴルドシュミット)  
●ドゴール政権時代(1958--1969年)の核兵器開発戦略
  ディエンビエンフーの惨敗(1954)、スエズ動乱(1956)で危機感
  対米独自外交路線(ゴーリズム)、核兵器計画本格始動(1958)
  第1回核実験 サハラ砂漠で成功(1960年)、「核クラブ」入り
しかしNPTには不参加。中国(毛沢東)との連携
●原子力発電開発戦略
  CEA(民族派=ドゴール系)vs. EDF(対米協調派=電力会社)
  エリート・テクノクラート(Ecole Polytechnique卒業生)間の対立
  原子炉炉型戦略=最初の8基は英国式ガス冷却炉、その後米国式LWR(PWR)に統一。 
  次第に対米従属から独自の炉型開発路線へ、設計の標準化  
●石油危機(1973)が大きな転機
  原子力を基軸とするエネルギー自立戦略・自給率の拡大へ
  原発新設が急ピッチで加速、国内体制の整備強化、事実上の国営化
  軽水炉製造=フラマトム
    ウラン濃縮=ユーロディフ(トリカスタン)
  再処理=コジマ(ラアーグ再処理工場)
  FBR開発=Phenix,Super Phenix計画(クレイマルビル)  
       SuperPhenixはその後政治的、経済的な理由で失速、中断
●対外原子力戦略の強化
  フランス型LWRの輸出振興
  再処理委託契約(日本、ドイツ、スエーデン、スイスなど)
  再処理技術(Purex法)の輸出
  日本:東海再処理工場の運転をめぐる日米激突(1977年、カーター政権と)
  韓国、インドなどでも同様な問題(いずれも米国が潰した)
  イラク:タムーズ原研の「オシラク炉」(1981年イスラエルが爆撃)
  インド:「タラプール炉」への核燃料提供(米国の肩代わり)
●NPTとの関係 ~一匹オオカミ
米英主導のNPT体制に反発し不参加。とくに原発輸出に不利と判断したため(原子力供給国グループ=NSGによる輸出規制とNPT第3条の解釈問題)
しかし国際的圧力でついに加盟(1992年8月。中国は同年3月に加盟)
CTBT成立の直前に「駆け込み」核実験実施(1995年ファンガタウファ環礁で)  

2.最近の状況(サルコジ政権登場以降)
サルコジ政権下で原子力推進体制の大規模再編・強化。 英独伊等への売電。
コジマ+フラマトム→アレバ(CEOロベルジョン→ウルセル) EDFの主導権。
EPR(1650MWe)が主力、国内ではフラマンビル。中型炉ATMEA-1(1000MWe)
  
海外でも多角的戦略
  フィンランドのオルキルオト3号機新設 トラブル続き
  中国の台山に2基EPR建設中
  UAE、ベトナムでは入札に失敗、現在巻き返し中、インドにも進出中
  英国市場に本格参入(アレバが英国企業を買収)
  米国でも(遠心分離式濃縮工場建設も)
  日本との関係:福島事故の後始末(汚染水処理、廃炉等)、追加的再処理委託? 


日本の脱原発の仏国内への波及を懸念、他方日本脱落は国際市場では有利?
  高レベル放射性廃棄物貯蔵問題=Christian Bataille、「可逆性」、ANDRA、Bure
デコミ問題=すでに13基(研究炉、商業炉)の経験。
  安全規制=原子力安全機関(ASN=Authorite de Surete Nucleaire)の創設2006年。
    以前は産業省所管、その後環境省、保健省を経て現在は完全に政府から独立。


3.フランスで原子力が盛んなのはなぜか?  
歴史的背景:国民性(例:Concorde, TGV)、政治制度(中央集権制)、国民教育(キュリー夫妻以来の伝統と遺産)、エリート・テクノクラートへの尊敬と信頼
  国際的背景:対米対等関係(ドゴーリズムの伝統)、炉型にも独自性 EPRに期待。
他方で、NPT/NSG上の立場、輸出振興策、原子力最先進国の責任とプライド。
      

4.脱原発のドイツ、イタリア、スイスとの関係(売買電システム)
ヨーロッパ全体でバランス・ベストミックス。(PPT資料参照) 
  日本(東アジア)とヨーロッパのジェオポリティカルな違い。     


5.講演のポイント(まとめ)
(1)元々資源小国のフランスで原子力が盛んなのは、エネルギー安全保障(自立)を求める戦略的判断に基づく。
(2)フランス人は一般的に現実主義者で、案外保守的な思考傾向がある。社会党も原子力支持。原子力反対はあっても圧倒的に少数派。
(3)社会的背景として、科学技術エリート(テクノクラート)への信頼・尊敬が厚い。
(4)政治体制は伝統的に中央集権的(cf:ドイツは地方分権的)。国会議員が地方自治体の首長を兼ねている。
(5)米国に裏切られたことで、対米従属せず(米国の「核の傘」に対する不信)、独自の核戦略・核武装路線を堅持。NPTにも長年非加盟(加盟は1992年)。
(6)原子力発電についても、独自路線(EPR、核燃サイクル路線)で、輸出志向が極めて強い。アレバの強み。
(7)ドイツ、イタリアなどが脱原発できるのはフランスから買電できるから。日本のグリッドはアジアで孤立。ドイツなどの真似はできない。
(8)今度の日本のエネルギー政策を決める上で、国内問題だけでなく、日本の国際政治上の立場や原子力の持つ外交的、戦略的意味も十分冷静に考えるべき。

 (未定稿)

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