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拝啓 安倍内閣総理大臣殿 (原子力政策に関する提言)

  • 執筆:金子熊夫
  • 掲載日:2013年2月 5日
  • 掲載紙: 電気新聞


拝啓 安倍内閣総理大臣殿
           
          金子 熊夫

間もなく福島原発事故から2年になろうとするが、事故の後遺症はまだ治癒からほど遠く、日本の原子力政策を含むエネルギー政策の行方も甚だ不透明である。昨年末の衆院選で前政権の「原発ゼロ」を否定する自民党が大勝し、第2次安倍内閣が誕生したものの、今夏の参院選までは世論を無用に刺激しないよう「安全運転」に徹するという。


他方、難産の末昨年9月に発足した新しい原子力規制委員会とその下の原子力規制庁は、従来の安全規制体制や基準の全面的な見直し作業に取り組んでおり、今年7月に新基準が制定されるまでは、停止中の原発の再稼働は一切認めないとの姿勢を崩していない。のみならず、大飯、敦賀、東通原発などいくつかの原発については新たに活断層問題が激しく議論されており、着地点が見えない状況が続いている。

あれだけの大事故の後であるし、国民の納得を得られるようにするには一定の時間がかかるのは止むを得ないとはいえ、安倍内閣が最優先課題に掲げるデフレ脱出、経済再活性化を実現するためには、何よりもエネルギー政策の確立が急務である。現状のまま火力発電を拡大し、化石燃料の輸入を増やし続ければ、国費の流出と企業の海外転出に歯止めはかからず、日本経済の復活は到底覚束ない。明らかな問題点は徹底的に修正、改善するべきだが、本来修正する必要がないところまで一律に、再確認のために時間をかけるのは単に無駄、無益というだけでなく、国の健全な発展を阻害するという意味で有害かつ危険とさえ言わねばならない。

このような問題意識に促され、筆者が主宰するエネルギー戦略研究会(通称EEE会議)は、姉妹関係にあるエネルギー問題に発言する会及び日本原子力学会シニアネットワーク(SNW)と協力し、有志会員139名の連名で、1月8日、安倍総理あてに緊急政策提言を提出した。詳細は右3団体のHPに掲載されているが、要点を箇条書き的にご紹介すれば次の通りである。

 ◇  

1.エネルギー政策を再検討し、実効性ある基本政策の早期推進を
(1) 再生可能エネルギー、化石燃料への過度な依存はリスクが大きい。過大な国民負担増を避けよ。
(2) 基幹電源として原子力が不可欠。既設炉を画一的に寿命40年と限定せず、安全対策を十分行った上で有効活用する。髙経年化対策に多額の費用を要するプラントは、より安全性を高めた新技術による新設プラントでリプレースしていくことが望ましい。必要に応じて新増設を進めるべき。
(3) 高レベル放射性廃棄物対策と核燃料サイクルは政府が先頭に立って進めよ。とくに廃棄物対策は国会に特別委員会を設置し、政治主導により官民一体で取り組む体制を作れ。

2.原子力発電設備の安全性の確認を適切かつ速やかに行って早急に再稼働すべき。早期の再稼働を目指し準備が進められているプラントについては、原子力規制庁のプレヒアリングを開始し、新基準制定後、可及的速やかに再稼働できるような配慮が必要。とくに「活断層」の定義を明確にし、設置許可時に関与した専門家を含め広く議論の場を設け、現行耐震設計審査指針との整合性を図りつつ、科学的・合理的な調査と評価の上判断することが大切。

3.エネルギー政策推進、規制、福島復興には実力ある組織と合理的運営が必要。除染や避難地域の復興及び廃炉を推進加速するための求心的な組織を早期に設置せよ。

4.エネルギー・原子力・放射線の教育と人材育成に注力が必要。魅力ある原子力の未来像を示し、研究、開発の人材育成を促すことが肝心。

5.原子力分野での国際貢献も。福島事故の教訓を踏まえ、安全性を一層向上させた原子力分野での国際協力は、我が国の責務。原発プラント輸出もその一つ。とくにインドとの原子力協力は、日印友好・戦略的関係の観点からも重要。

(2013/01/24)

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